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ケニア旅行記

(2007年7月27日〜2007年8月5日)

 

 

★ 6日目 ★

事実上の最終日の朝がやってきた。昨日はゴードンさんに対する八つ当たりを一度は封印しようとした。しかし、昨夜同時刻近くでゲームサファリをしていたイギリスの老夫婦が4匹のチーターを見たという事実を知らされてから、僕はゴードンさんに対する懐疑の念を払拭できなくなっている。サファリは大自然を相手にしているのだ、自分に言い聞かせても大人になれない。

6時半、マラ・セレナ・ロッジを出発する。ゴードンさんは今回も狙いをチーターに絞り、何度もチーター出没スポットを念入りにのろのろとサファリカーを走らせた。その慎重な姿は足音を忍ばせて狙った獲物に近づくチーターのようだった。
この朝のゲームサファリで出会えた動物は数少なかった。チーターだけを狙った結果だけに文句もなかった。でも、文句はなかったが、僕は朝のサファリが進むにしたがって無言になり、嫁はその空気を察し、ゴードンさんも言葉を発しなくなった。

ゲームサファリをはじめて1時間半が過ぎた頃だった。朝のゲームサファリ終了まであと30分。ゴードンさんがバッファローを発見してその方向にサファリカーを進めた。ゴードンさんは朝のゲームでのチーターをあきらめ、サファリ客のあいだで人気のあるバッファローをこの朝のゲームの目玉にしようとしたのだった。僕はそのゴードンさんの気持ちが嫌で、あと30分無駄でもいいからチーターを探すよう忠告しようとしたとき、今まで見たことのない後姿を目の当たりにした。その後姿はきゃしゃで小さく震えているようだった。

『ゴードンさん、あれは何?』、僕の言葉に左手のバッファローだけに気を取られていたゴードンさんが僕の指差す方向に視線を送った。『チーターだ!』、ゴードンさんは小声で言い切った。僕たちは喜びや安堵を忘れ、なぜか不思議な緊張感を覚えた。落ち着いてくると、僕が発見したチーターの横にはもう一頭のチーターがいて、その前には前方のトムソンガゼルを注視するもう一頭が、そして最後尾にもう一頭のチーターがいた。ハンティングが丁度始まろうとしていた。

先頭のチーターが草の高さまで上体をかがめながら少しずつ前進する。残りの3頭はその場で先頭のチーターのハンティングの動向を見守っている。チーターが歩を進めてからおよそ15分、気が付く様子のないトムソンガゼルまであと20メートルに近づいたとき、先頭のチーターはその姿を現し、トムソンガゼルは逃げる余裕を持たないまま見事に仕留められた。そして、残りの3頭はその様子を確認すると同時に突っ走りその食事にありついたのだ。テレビでは残酷だと思える光景が、神々しく思えた。そこではじめて僕たちにも歓喜の瞬間が訪れた。

朝のゲームサファリの帰り道、嫁は相変わらず『チーター♪チーター♪』とチーター音頭を口ずさんでいた。
 
チーター チーター チーター
忍び足のチーター
 
見守るチーター
よそ見するチーター
チーター チーター 水牛と背中の鳥
走るチーター
お食事中のチーター
水牛と背中の鳥
 
朝食にもかかわらずグラスワインを飲んだ。ビールの値段の倍近くするグラスワインを2杯も飲んだ。そして腑に落ちなかったことを思い出した。チーターだと言い切った時の、ゴードンさんのカッコ良さに嫉妬した。チーターを見つけたのは僕なのに。とにかく、こんな話をしている僕たちの口元はずっと緩んでいる。
朝食中、イギリスの老夫婦がテーブルに来て、今朝はライオンのハンティングを見たと教えてくれた。今となっては聞かなかったことにするくらい余裕があるのだ。しかし、嫁が『でも、タテガミの立派なライオンが見たい』とつぶやいたとき、妙に納得してしまう僕はまだまだ未熟なのだろうか。

ここで、ガイドの責任論のウンチクを語りたい。ガイドは自然を相手にしているので責任なんてないんだけど、ワインとチーターに酔っているのだ。
ドライバーとガイドを別々に雇う場合、ガイドは専任なので責任は重い。
一方、ドライバーがガイドを兼ねているとき、ガイドにあまり期待しちゃいけない。まず、兼任ガイドは運転している事実がある。次に運転席に陣取る兼任ガイドはサファリカーの天井から顔を出すことができるサファリ客とは高さ1メートル弱の視点の違いがある。そう、兼任ガイドの場合、サファリ客たちこそ動物探しの大いなる一役を担っているのだ。
もうひとつ言いたい。イギリスの老夫婦はロッジまで飛行機で来て、マラ・セレナ・ロッジ専属のガイドに案内を委ねていた。言わば、老夫婦のガイドはマラ・セレナ・ロッジ周辺を知り尽くした地の利がある。
一方の我らがゴードンさんは、ナイロビの旅行代理店のガイドで、ケニア国内だったらどこへでも行く、言い方は悪いが守備範囲が広く浅い兼任ガイドなのだ。だから同じパフォーマンスを期待しちゃいけないのだ。
それと、サファリカーに無線はあったほうが良いですか、と問われたら、『あったほうが良いに決まっているだろう!』と答えるでしょう。
 
太陽 キリン ハイラックス
朝の太陽
朝のキリン
ロッジ内にいたハイラックス
 
16時、夕方のゲームサファリが始まった。見たいものはまだまだたくさんあった。お座りするキリンとか、ヌーの川渡りとか、お下品ではあるが動物の交尾なんかも興味があった。嫁は今度は『タテガミ♪タテガミ♪』とチーター音頭の節でタテガミ音頭を口ずさんでいた。朝のゲームサファリとは違って嫁のタテガミ音頭には悲愴感はなく、僕のゴードンさんに対する要求も

『首の短いキリンとか突然変異した横縞のシマウマが見たい』

とか言っている。ゴードンさんも平和な顔で最後のゲームサファリに何か面白いものを探そうとしている。

そんなお気楽な僕たちに立ちはだかったのは20頭くらいのゾウの群れだった。圧巻だ、君たち今までどこにいたんだ!
そして、その先にはハイエナの群れが。すごい、すごすぎるぞ、動物の宝石箱や〜♪と浮かれてハイエナの群れに近づこうと子ゾウの近くを通ろうとすると親ゾウに激しく威嚇されました。逃げました。ゾウって怖いです。もう『さん』付けはいたしません。
その後もキリンとかジャッカルとか、ヘビクイワシとかきれいな隊列のイボイノシシとかがいました。そして、ヒョウよりもサイよりもタテガミライオンよりも珍しいらしいオオミミギツネに出会ったのです。珍しいのですが正直地味すぎます。できれば、ヒョウやサイのほうがうれしいのですが・・・。
 
ゾウの親子 セグロジャッカル オオミミギツネ
ゾウの親子
かわいい顔のジャッカル
地味なオオミミギツネ
イボイノシシ
イボイノシシの隊列           
  
 
【本日出会えた動物】
サバンナヒヒ、シママングース、ブチハイエナ、オオミミギツネ、セグロジャッカル、チーター、ハイラックス、ゾウ、シマウマ、ヌー、カバ、イボイノシシ、マサイキリン、トピ、インパラ、トムソンガゼル、バッファロー、ダチョウ、ハゲタカ、アフリカハゲコウ、他
 



 

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